
彼女――柊 瑞樹(ひいらぎ みずき)は、
その日も診察室で俯いていた。
カウンセリングを行おうと問いかけをするも、
彼女は光が宿らない虚ろな瞳のまま反応しない。
以前は学校のチアガール部に所属し、その輝かしい笑顔で
観るもの全てを魅了していた明るい彼女…。
しかし、そんな彼女の姿はもうどこにもない。
――ストーカーによる悲惨な暴行事件の被害者となってしまったから。
壊れてしまった彼女を、精神科医としての矜持にかけて
なんとしてでも快復させたい…僕はそう強く思っていた。

タブー〜精神科医と傷を負った少女〜